AMDからRyzen 7 5700というCPUが発売されましたが、このCPUには注意が必要です。なぜなら、似たような型番のCPUに5700XというCPUがありますが、中身は全くの別物だからです。
それぞれのスペックを確認し、Ryzen 7 5700がどのようなCPUなのかを確認していきます。
Ryzen 7 5700と5700Xのスペックの違い
Ryzen 7 5700とRyzen 7 5700Xは、同じ型番の末尾にXが付いているかどうかだけの違いに見えますが、実際には大きな違いがあります。以下に、主な違いをまとめました。
項目 | Ryzen 7 5700 | Ryzen 7 5700X |
---|---|---|
アーキテクチャ | Zen 3 | Zen 3 |
コア数/スレッド数 | 8コア/16スレッド | 8コア/16スレッド |
ベースクロック | 3.7GHz | 3.4GHz |
最大ブーストクロック | 4.6GHz | 4.6GHz |
L3キャッシュ | 16MB | 32MB |
TDP | 65W | 65W |
PCI Express | 3.0 | 4.0 |
内蔵グラフィックス | なし | なし |
価格(掲載当時) | 約30,000円 | 約23,000円 |
ベースクロック
ベースクロックはRyzen 7 5700の方が高いです。
ベースクロックとは、CPUが動作する基本的な周波数のことを指します。ベースクロックが高いほど、CPUは速く動作することができます。
一方で、CPUの負荷に応じてベースクロックよりも高い周波数で動作させる最大ブーストクロックに差はありません。
L3キャッシュ
L3キャッシュはRyzen 7 5700Xに比べて半分の16MBになっています。
L3キャッシュ容量の違いは、主に以下の3つの要素に影響します。
1.処理速度
L3キャッシュは、CPUが処理するデータの一時的な保存場所です。
L3キャッシュ容量が大きいほど、CPUがデータをメモリから読み出す頻度が低くなり、処理速度が向上します。
2.マルチスレッド性能
L3キャッシュは、複数のスレッドが同時にアクセスできます。
L3キャッシュ容量が大きいほど、複数のスレッドがデータを競合することなく処理できるため、マルチスレッド性能が向上します。
3.ゲーム性能
ゲームでは、多くのデータが頻繁にアクセスされます。
L3キャッシュ容量が大きいほど、ゲームに必要なデータがキャッシュに保存される可能性が高くなり、ゲーム性能が向上します。
PCI Express
PCI ExpressはRyzen 7 5700が3.0、5700Xが4.0と世代に差があります。
PCI Express4.0対応のものを3.0のスロットに接続することは出来ますが、性能は3.0の速度に制限されます。
影響はそれほど大きくないかもしれませんが、制約があることは認識しておきましょう。
なぜ5700という型番なのか
では、5700はどこから来たのでしょうか?実は、Ryzen 7には2021年4月に発売された5700GというAPU(CPUとGPUを1つにまとめたもの)が存在します。
項目 | Ryzen 7 5700 | Ryzen 7 5700G |
---|---|---|
アーキテクチャ | Zen 3 | Zen 3 |
コア数/スレッド数 | 8コア/16スレッド | 8コア/16スレッド |
ベースクロック | 3.7GHz | 3.8GHz |
最大ブーストクロック | 4.6GHz | 4.6GHz |
L3キャッシュ | 16MB | 16MB |
TDP | 65W | 65W |
PCI Express | 3.0 | 3.0 |
内蔵グラフィックス | なし | あり |
価格(掲載当時) | 約30,000円 | 約26,000円 |
ベースクロックに多少の差があるものの、5700は5700GというAPUからGPUを省いたものという表現が正しそうです。
まとめ
現状、Ryzen 7 5700はRyzen 7 5700Gに比べて内臓グラフィックスが削除され、Ryzen7 5700Xに比べてL3キャッシュが半減しPCI Expressの世代が古いのにもかかわらず、その両者より価格が高いCPUとなっています。
今後価格は下がってくると予想されますが、たとえ5700Xより価格が下がった場合でも、その素性を知ったうえで購入することをお勧めします。
最後に、このCPUがどのようなユーザに向いてるのか挙げてみます。
- (価格が下がった前提で)予算が限られているが、8コア16スレッドのCPUが欲しい場合
- グラフィックスカードはすでに持っているか、安価なもので十分な場合
- 最新のゲームや重い作業をしない場合
ご自身の用途に合ったCPUを選ぶのも、自作PCの楽しみですね。